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「戦艦大和」ペーパークラフト本・出版までの過程

「戦艦大和」1/350スケールのペーパークラフトは当初、「空母赤城 1/350」と同様に無償公開を目標に設計を進めていたものなのです。基本的な設計は2012年末頃にはできていたのですが、請け負い事業などで思うように時間がとれずに、細部の作りこみや問題点の改良などの作業が行えないまま1年が過ぎてしまいました。
そして2013年12月に、トランスワールドジャパン株式会社様より戦艦大和ペーパークラフト出版のお話を頂きまして、開発中だった大和を出版用として採用することを決定いたしました。タイトルは「戦艦大和をつくる」となりました。
ここでは、『戦艦大和』1/350スケールペーパークラフトの開発から出版までの過程をご報告させていただきます。


1. 設計に必要な図面や写真・動画などの資料を集め、戦艦大和の全体像を把握します。大和は数回の大規模な改修が加えられた為、年代によって造形が大きく異なります。完全な設計図も残っていないので細部の構造については様々な説があり、現在でも新たな発見や考察が加えられ続けている事を知りました。



2. 集取した図面をベースに3Dデータを作り、なるべく新しい考察に基いて細部を調整します。主に参考にしたのは、広島県呉市の「大和ミュージアム」に展示されている1/10スケール「大和」の超巨大模型、タミヤの1/350「戦艦大和」プラモデル、ヤヌス・シコルスキー著「戦艦大和図面集」などです。



3. 3Dデータを基に展開図をつくり、試作1号をつくります。この段階は3Dデータを実際に立体化した時に生じる問題点の検証と、組み立て手順やテクスチャの描き込み位置の確認用なので、多少の歪みや不具合があっても気にしません。ここで確認した問題点を修正し、試作2号に反映します。



4. 展開図にテクスチャを描き込んでいきます。これは船体のリベット接合のパターンです。喫水線から下は船首方向が上に重なる様にリベット打ちされていて、喫水線から上は裏当てをして接合されていたようです。



5. 艦首バルバスバウの形状を見直し、緩やかな丸みを持たせることができました。
この作例では、接着構造を分かりやすく見て頂けるように紙の断面のレタッチなどは行っていませんが、完成後の製品をご購入後は組み立てる前にパーツに近い色を断面に塗っておく事で、さらにリアリティを増すことができます。



6. 艦橋部分の造形をまとめました。艦橋最上部の測距儀も主砲射撃所を残した状態で回転可能なので、主砲と連動した表現が可能です。
屋上の防空指揮所の床面は、木製グレーチングだったという説を採用しました。滑り止め加工の鉄板だけでは第一艦橋の中が暑すぎるんじゃないかと思いますので。



7. 主砲の造形ができました。砲身の上下可動を軸棒方式から紙の折れを利用する方式に変更することで、いくら動かしてもヘタレないタイプにすることに成功しました。仰角0度から45度まで動きます。
仕組みは簡単で、上下に動く出っ張りをつくりそこに砲身を差し込むだけです。差し込まれた砲身は穴の左右で軽く挟まれてそれが抵抗となり、自由な位置で固定されます。砲身を差し込む穴は観音開き風に開口され内側に折り込まれており、扉にあたる部分が元に戻ろうとする力で砲身をしっかりと抑えています。


ここで砲身を抑えます。


8. 主砲・副砲を船体に設置しました。いい感じに回転します。



9. 煙突周りをつくりました。煙突には菊水マークが入っていたという説を採用しました。



10.  高角砲・機銃・探照灯が設置されました。



11. メインマストや後部射撃指揮所の周辺をつくりました。
マストには「非理法権天」の幟旗があったという説を採用しました。
測距儀も主砲射撃所を残した状態で回転可能です。



12. 機銃類を配置しました。艦橋周辺のボリュームが一気に増しました。



13. 艦尾周辺の、カタパルトやジブクレーン、スクリュー等を設置しました。
ジブクレーンは支柱撤去説を採用しました。 カタパルトとジブクレーンは回転可能です。



14. 艦首錨甲板周辺の細かなパーツを配置しました。



15. 飾り台をつくりました。旭日旗と艦名のみの表記です。



16. 船体や甲板の色を決めるために、数種類の候補を実際に本紙で印刷し、発色や再現性を確かめます。
船体色は少し青みの入った鼠色としました。大和の船体色は、呉海軍工廠に資料が残っているので確かなものです。
大和ミュージアムの1/10スケール大和も同じ色ですね。
甲板は檜の板材のイメージを明確にするために、少し赤みがかった色としました。こちらも1/10スケール大和を参考にしています。



17. 組み立て説明書を製作中です。写真は説明書用に組み立ててている艦橋です。船体色の変更、溶接跡やリベットの追加、ディテールの追加などがお分かりいただけますでしょうか。



18. まだ若干の修正作業は残りますが、表紙撮影用のサンプルが組み立てできました。
全長約75cmの大型ペーパークラフトです。「戦艦大和」の特徴を残しつつ、なるべく簡単に組み上がるよう考慮して設計いたしました。
基本となる造形は、大和ミュージアムの1/10大和をベースとし、最新の考察を参考にディテールを盛り込んであります。




19. 表紙のデザインが決まりました。
なかなかカッコイイのではないでしょうか。本のサイズが大きいこともあり、写真に迫力があります。



2014年5月24日(土)より発売が開始されました!
amazonからもご購入いただけます。

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