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無料ペーパークラフトについて

日本国内では児童書のおまけ程度と思われがちなペーパークラフトですが、諸外国ではスケールモデルを中心とした製品が数多く販売されており、大人が楽しむ趣味として認識されその地位も確立されています。 その完成度は非常に高く、数ヶ月~数年をかけて制作しプラモデルを凌駕する程の作品に仕上げるのです。
そのような精密ペーパークラフトは、カードモデルとも呼ばれます。
カードモデルはプラモデルとは完成時の印象が大きく異なり、リビングやエントランスに堂々と展示ができ、それを見た人が紙製だと知った時の驚きも楽しみのひとつです。 もちろんその分組み立て時の難易度も非常に高く、「のりしろ」が無いのは当たり前、切断面同士の接着や、針金などの加工や塗装、別途に厚紙を用意、番号指定と矢印のみの組立説明書など、未経験の初心者が始めるにはあまりに敷居が高いのも現実です。
しかし、こんなに楽しい趣味を諦めてしまうのは非常にもったいないと思います。 そこで紙模型工房では、ペーパークラフトの初心者の方でも、完成度が高く満足できるレベルの作品を、「必ず完成させることができる」を目標に様々な無料ペーパークラフトをご用意いたしました。 初心者の方向けに制作の難易度をグ~ッと下げつつ、なるべく精密感を損なわないモデルとして設計しております。

 

紙には「目」があるんです

紙(洋紙)には繊維の流れの向きがあり、「紙目」(かみめ)と呼ばれています。

紙の長辺に沿って平行方向に繊維が流れている紙を縦目(T目・タテ目)の紙、紙の短辺に沿って平行方向に繊維が流れている紙を横目(Y目・ヨコ目)の紙と言います。 この流れの方向によって、ペーパークラフト製作時に大きく影響する場合があります。 これは紙を製造する段階で溶かしたパルプ(紙の原料)を機械で平らに流し、それを固めて紙にする為、パルプが流れる方向に沿って紙目が出来てしまうのです。
筒状のパーツを作る時など紙を曲げるときに紙目の影響が出やすいです。紙目に沿って曲げるとキレイに曲がりますが、紙目に逆らって曲げようとすると曲がりにくいのです。

また紙を折る時も紙目の影響が出やすいです。紙目の流れに沿って折るとキレイに折れやすく、流れに逆らうと折れにくくなります。これを避けるためにも、展開図の折り線は鉄筆や空のボールペンなどを使って、予めなぞっておく事が重要です。

紙目の調べ方は、流れ目が縦目の場合は、寸法を210×297mmの様に小さい方の数字を先に表記します。 また紙は紙目の方向に沿って破れやすいので、紙の端を少し破いてみると調べることができます。

 

ペーパークラフトの歴史

西洋では18世紀頃に建物や船等の建造物を中心に作られ、日本では江戸時代に「立版古」(たてばんこ)という、立体絵で風景などを再現したジオラマや、神輿(みこし)のミニチュア模型等が作られています。
明治時代以降には教材としても使用され、科学雑誌の付録などで目にした方も多いのではないでしょうか。
当時は立体製作と平面への展開は全て手作業によるものでしたが、現在では3Dソフトやドローソフトなどを使用したコンピューターによる設計がほとんどとなり、設計のスピード、精度、完成度なども格段に向上しています。

 

ペーパークラフトの本場、ポーランド

超精密ペーパークラフトの本場といえばヨーロッパ。中でも特に秀でているのが「ポーランド共和国」です。ポーランド製のペーパークラフト(カードモデル)は、プラモデルを遥かに凌駕する精密さですが、完成させるまで半年~数年程度が必要です。
組立説明書もかなり大まかなので、完成時の造形を予め十分に理解している事が必要です。たしかに非常に難易度が高く、根気と器用さを要求されますが、完成した時の満足感はこの上なく大きいはずです。 ペーパークラフトという文化を成長させて頂いた功績はとても大きいと言えるでしょう。 ポーランド製品は日本でも入手可能です。「紙模型.com」(http://www.kami-mokei.com/)などで購入できます。
ちなみにポーランドは日露戦争時にロシア艦隊の情報を提供してくれたり、大戦中は暗号の解読法を指導してくれたりと、何かとお世話になっています。

 

各種ジャンル

ペーパークラフトは、いくつかのジャンルに分けられます。

本来、「ペーパークラフト」とは紙で作られる造形全般を指します。 一枚の紙からさまざまな大きさ、色、形の部品を切り出して組み立てるものと定義されます。 ペーパーモデル・・・プランモデルに迫るような、非常に精密な造形を再現したものです。カードモデルとも言います。自社製品やキャラクターのPR等にも利用でき、WEBサイトからのダウンロード用としても人気です。

〇ポップアップカード・・・飛び出す絵本のように、折り畳まれたカードを開いたときに立体が立ち上がるものです。DMや名刺等に応用できます。

〇ダンボールクラフト・・・ダンボールを素材として造形を作ります。素材の厚みや質感等を利用する場合があります。量産するにはレーザーカットする場合が多く、少々コストが高い傾向があります。

〇折り紙・・・広義ではペーパークラフトの一種です。主に一枚の紙を折って折り上げられた作品で、量産には不向きです。

〇ペーパーノベルティ・・・主に紙を使って広告用の立体物を作ったものです。サンバイザーや立体カレンダー、小物入れ、スマホスタンド等を、比較的安価に立体化できます。

〇ペーパーホビー・・・飛ばせる飛行機、紙相撲、立体パズル等、手にとって遊ぶことの出来るペーパークラフトです。DMや名刺等に応用できます。 

 

ノベルティとして活用するメリット

◆印刷して配布する場合(他素材と比較)

○低コストで立体物を提供できる

○制作単価が安い

○短期間に制作できる

○破棄が容易

○安全性が高い

○在庫の保管場所が容易で省スペース

○持ち帰りやすいので配布しやすい

○エコなイメージがある


◆WEBダウンロードで公開する場合

○印刷コストがかからない

○在庫管理が必要ない

○コストがほぼ設計費用だけでよい

○設計完成後すぐに公開できる

○何度でも、何個でも組み立てられる

○ダウンロード数が把握しやすく、ネットでの評判も分かりやすい

 

ホビー用途だけじゃない

ペーパークラフトは、ホビー以外の用途でも、様々な現場で役立っています。

一例ですが、下は第二次大戦中に、ソ連戦車のペーパークラフトを作って、対策を講じるドイツ軍戦車兵の写真です。 プラモデルが誕生する以前の精密模型は、木製やペーパークラフト製が主流だったようです。
 
私が請け負った例では、精密機械の金型を作る前の開発段階で、まず実物大のペーパークラフトを作って、動きや大きさや使い勝手などを検証する為のツールとして活用された事がございます。
模型を低コストで立体化する手段として、ペーパークラフトは非常に優秀な手段なのです。
また、什器(店舗で使う棚などの機材)や、フォトフレーム、カレンダー、サンバイザー、立体看板など、紙を素材とした様々なアイテムも広く活用されています。

 

印刷色について

ダウンロードしたペーパークラフトのデータを家庭用のインクジェットプリンタでプリントした時に、画面に近い色で印刷されず、なんだか青っぽかったり、緑っぽかったりすることがあります。
カラープリンタによる印刷は「印刷モード」や、用紙の種類によって色合いが大きく異なります。インクジェットプリンターの場合は特にその傾向が強いのです。 各社のプリンターインクの特性や、用紙メーカーの特性の組み合わせにより結果が異なるため、実際にテスト印刷をしながら最適な設定を手探りで探すしかありません。
印刷設定の方法はメーカーや機種によって異なりますし、用紙が異なれば必ず同等の結果になるとは限りません。 テスト印刷をして決定されることをお勧めします。
また、詰め替え用インクなどをご使用の場合、かけ離れた印刷色や、退色なども起こりやすくなる場合があります。なるべく機種指定の専用インクを使いましょう。

 

3Dデータの設計について

私がペーパークラフトを設計する時は、まず3Dデータを作りそれを展開図にしていきます。
ペーパークラフトだけを作って終了な場合は3Dデータもそこでお役御免です。しかし3Dデータは他にも様々な使い道があります。
下の画像は、3Dデータをペーパークラフトの他に、立体出力機で樹脂造形した例です。これを金型にしてレジン等で量産することができるようになります。(むろん出力後の後処理と量産の為の知識と技術は必要ですが)
他にもテクスチャを貼り込んで3DCGの基礎データにしたり、このデータをそのまま販売することも可能です。
いずれ、一般の家庭にも3Dプリンタが普及していくことになると思います。その時に、3Dデータを制作することができ、さらにその活用を有効にできる作家とそれ以外の作家との格差はどんどん開いていくことでしょう。


3Dプリンタで出力したオブジェクトは、そのままでは扱いにくい場合が多いのです。 下の写真は、粗い部分を修正して型起こしができる程度まで調整したもののサンプルです。

 

最後の一辺問題

ペーパークラフトの設計と組み立て時の課題のひとつに、「サイコロ構造最後の一片問題」(勝手に命名)があります。 要するにサイコロのような多面体の展開図を組み立てるときに、最後に接着する辺をどのように接着するのがベストなのか、という事になります。 (※展開図を接着して組み立てる方式のペーパークラフトの場合)
接着剤の塗布されたのりしろは指先やピンセット等でしばらく挟んで圧迫しておくことで、紙の内部まで接着剤が浸透して固まる事により、しっかりと接着されます。逆に、接着剤を塗布したのりしろを片側から軽く押さえただけでは接着剤の浸透が少なくなり、接着面も小さくなってしまい接着力が弱くなってしまいます。

この問題に対する解決方法のいくつかを、下記にご紹介します。

■構造的な対応(作家が設計)
○最後の辺に穴を開けておき、その穴を通してピンセットなどでのりしろを挟んで圧迫し、乾燥後に辺に空いた穴を別パーツで塞ぐ方法。

これは私が主に採用している方法です。ただし穴を塞ぐためのパーツの厚みが僅かですが プラスされてしまうという欠点もあります。

○のりしろを押さえる為のフレームを用意しておく方法。

外観に影響しないスマートな方法です。ただし、パーツの点数と手間が増えるのが欠点です。

■組立時の対応
○展開図を厚紙でプリントする方法。
厚紙自体の張りを利用する方法です。薄い紙に比べのりしろが強いので、外側から押さえるだけでも圧力がかかり、しっかり接着できます。ただし、紙の厚さが展開図の設計時の想定外なので、全体の歪みに通じる可能性があります。

○構造物の中に詰め物をする方法。

とてもシンプルな方法ですが効果的です。ティッシュペーパーなどを中に詰めておき、その反発力を利用して上から押さえて接着できます。これは擬似的なフレーム構造とも言えます。また構造物の強度が増しますので、凹んだまま戻らなくなるという事故が減少します。ただし、多少ですが完成時の重量が増します。

他にも様々な対処法があるかと思います。造形にベストな方法を常に模索し、ご提供していくのがペーパークラフト作家の使命のひとつであると思っています。

 

現物と模型の違いについて

ペーパークラフトに限らず、模型は実物に正確な形状であれば正しいという事にはなりません。
ホビー目的の模型は、その特徴が強調されている方が楽しく見れるからなのです。
例えば実際の艦船を実物を肉眼で見る場合は下から見上げる形になる事が多く、全体が見えない上に遠近法による歪みが大きくなります。 それが模型の場合は主に上から見下ろす視点になる事が多く、大きさも小さいので全体がよく見え歪みも小さくなります。
この事により実物では強調されて見えた細かな部分が、模型化されると全体に埋もれてのっぺりとした印象となってしまいがちです。つまり、形状を正確に再現しただけでは特徴的な部分の印象が殺されてしまい、全体的につまらないものになってしまいがちなのです。
そのため模型化に当たり特徴だと思われる部分を少しオーバー目にデフォルメして強調し、より実物に近い印象に近づける必要があるのです。

このイージス艦「きりしま」の例では、フェーズドアレイレーダーの部分を忠実に再現した場合は、ほとんど紙の厚さ程度の厚みしか無いのですが、これの立体を強調してしっかりと厚みをもたせています。他にも主砲等の艤装を若干大きく造形したり、艦橋を高めに作ったりしています。
実は形だけでなく色も同様に、実物の色をそのまま模型に着色した場合、やけに濃い色に見えてしまいます。 これは実物と模型では空間距離が大きく違うために、空気の層による光の拡散で、彩度の変化が発生するからなのです。
この写真でも遠くの山ほど色が薄く見えているのがお分かり頂けるかと思います。 模型の場合はここまで薄くなる事はありませんが、模型をカラーチップ通りに着色すると濃い色に見えてしまう理由はこれなのです。良い悪いではなく、こういう理屈もあるので色がカラーチップと違うから間違いというわけではないという事のご紹介でした。
ただし1/1スケールの模型の場合は同じ形状、同じ色にすべきなのは当然ですね(笑)。

 

ボンド汚れの対処方法

パーツを接着する時に接着剤(木工用ボンド等)が指に付いてしまって、変な跡ができてしまった場合の対処法です。 このような水性ボンド系の汚れは、綿棒の先に少量の「ラッカー薄め液」を付けて、軽く叩くとかなり目立たなくなります。

ゴシゴシやると紙を傷めるのでご注意ください。 ぱっと見では分からなくなるかと思います。
※全ての接着剤に有効とは限りません。
※展開図は家庭用インクジェットプリンタから出力した場合に限ります。レーザープリンタで出力した展開図では実行しないでください。

 

スマホからもプリントできます

ペーパークラフトの展開図はスマホからでもプリントできます。
ご自宅にプリンタがあり、パソコンを使用しないでスマホから直接印刷したい方は下記の方法をお試しください。
各メーカーのプリンター用のスマホアプリ(無料)をダウンロードすると、スマホから直接プリンタにファイル転送、印刷できる機種が多くあります。 ※旧機種では対応していない場合があります。
具体的なやり方は、お持ちのプリンターのメーカーサイトを下記からご確認ください。

キャノン

エプソン

ブラザー

 

完成作品の長期保存について

ペーパークラフトは素材が紙ですので、湿度による伸縮や、光による色褪せなど、環境による影響を受けやすいのです。
完成品を箱に仕舞って保管するのでしたら比較的に劣化は少ないのですが、生活環境下で5年、10年と長期の展示をする場合は、下記の要件についての検討をおすすめいたします。

●展開図のプリント時に顔料インクを使用するプリンターを使う。 プリンターインクには顔料と染料があります。顔料インクは光による退色が少なく、染料は光の影響を受けやすいという特性があります。顔料インクは染料インクより多少割高なのですが、作品の長期保存に向います。 詳しくは「印刷する道具」ページをご参照ください。 また、カラーレーザープリンタでプリントした展開図も長期保存に向いています。レーザープリンタはインクジェットプリンタより大型で高重量なので家庭向きではありませんが、光による退色は顔料インクよりも少ないのです。

●ペーパークラフト用の透明ニスをスプレーする。 ペーパークラフト用の透明ニスをスプレーすることで、湿度の影響を軽減することができます。スプレー後は硬化するので、構造の強化にも繋がります。 「ハマナカ エコクラフト仕上げ用 水性アクリル 透明ニス スプレータイプ
ただし、ニスの硬化後はツヤのある表面になってしまいますので、マット仕上げの模型には不向きです。 また、レーザープリンタで出力した用紙は、トナーが溶け落ちてしまう可能性がありますのでご注意ください。

●ディスプレイケースに入れる。 アクリルケース等に入れて保管することで、不意な破損や埃などから保護する事ができます。 普段はケースの上に布などを被せておけば、光からの保護もできます。 ディスプレイケースはアマゾンなどで購入できます。

 

リタッチについて

ペーパークラフトのパーツを切り出したあとに、白く目立つ紙の断面を印刷色と同じ色に塗って目立たなくすることを「リタッチ」といいます。

リタッチを行うとパーツの境界が分かりにくくなるために、「紙模型工房」のサンプル写真ではリタッチを行っていませんが、より精密感のある模型表現が可能となりますので、チャレンジしてみるのもオススメです。 ちなみに私の場合は、紙の断面が見えたほうがペーパークラフト感があるので、そのまま作る方が好みです。

リタッチの方法は、マーカーや絵の具を使って断面を塗るのが一般的です。 ペーパークラフト専用紙など、印刷面にプリント用のコーティングがされている用紙の場合、断面に塗った色が印刷面より濃い目になってしまう場合があります。印刷面の色より、少し薄めの色から塗ってみるのが良いでしょう。 また用紙によっては水分の浸透が早い(深い)ものもあり、印刷面の色に影響を与えてしまうものもあります。その場合は普通の絵の具より乾燥の早いアクリル絵の具の使用をオススメいたします。

マーカーを使用する場合は、油性ペンは紙への浸透が早いので、水性のペンが良いでしょう。 顔料系は扱いが難しいので、染料系のペンをオススメします。

リタッチはとても手間のかかる作業です。 簡単に済ませたいのであれば、色の薄い部分はリタッチせず、色の濃い部分にだけ薄墨の筆ペンを使うという方法があります。これだけでも断面はかなり目立たなくなり効果的です。

最後に注意点として、組み立てた後にリタッチしようとすると、固まった接着剤の影響でうまく塗れない場合があります。また組み立て後では断面だけを塗りにくい事もありますので、リタッチは組立前に行うのが無難です。

 

POPUPカード

飛び出す絵本の原理で作られるPOPUPカードも、ペーパークラフトの一種です。

下図に基本動作の一部をまとめてみました。もちろん、動作のパターンはもっと多くて複雑に組み合わせることもできますが、代表的な例だと思います。

構造による制限はありますが、パーツ同士の接続に両面テープなどを使わずに、紙の差し込みだけで行う技も色々あります。